台湾の忘年会「尾牙(ウェイヤー)」は、日本とは少し違う特別なイベントです。従業員への感謝を込めて行われるもので、抽選会やパフォーマンス、豪華な食事などが楽しめます。
今回は、この台湾ならではの尾牙についてご紹介します!
なぜ忘年会は「尾牙」と呼ばれるのか?
「牙」の由来
古代の台湾では、土地を巡る争いが頻繁に起きていました。そのとき、土地や地域の区別を示すために、動物の牙(歯)を使って旗をデザインしたことが「牙」という言葉の由来とされています。

「牙祭」とは?
古代では、毎月定期的に行われる祭礼を「牙祭」と呼んでいました。この祭りでは土地神に感謝し、商売繁盛を願っていました。牙祭は旧暦の毎月2日と16日に行われ、その年で最初の牙祭を「頭牙」、最後の牙祭(12月16日)を「尾牙」と呼びます。
「尾牙」は神様への感謝を込めたお祭り
「尾牙」はもともと土地神に感謝する祭りでしたが、商人たちの間で広まり、商売繁盛や従業員への感謝を示す行事へと発展しました。現在の台湾では、尾牙が企業や団体の忘年会として定着していて、従業員への感謝を込めたイベントとして行われています。
尾牙はいつ開催されるの?
日本の忘年会は年末の12月頃に開催されますが、台湾の忘年会は旧正月の前に行われるので、1月から2月頃に開催されます。
もう一つ「春酒」という尾牙に似た行事があります。春酒は新しい1年の始まりに開催されるイベントで、従業員や取引先に対して「今年もよろしくお願いします。」、「頑張りましょう!」という意思を伝える場です。現在では、多くの企業が「尾牙」と「春酒」のどちらか一つだけを開催する傾向にあります。
尾牙ってどんなイベント?
台湾の尾牙はただの食事会だけではなく、コンサート、抽選会、従業員がステージでダンスやパフォーマンスを披露することもあります。特に大手企業の尾牙は豪華さで注目され、ニュースになることもあります。

BMWやテスラが景品に!
今年、パソコン大手のASUSは南港展覽館で忘年会を開催しました。参加した社員は約8000人で、会場には800の円卓が並ぶ大規模なセッティングでした。抽選会の景品は総額2500万台湾ドルを超え、一等賞はなんと270万台湾ドル相当のBMW X3でした!
また、ASUS関連企業である和碩(ペガトロン)はさらに豪華な景品を用意しました。景品総額は1.6億台湾ドルを超え、一等賞にはTesla Model Yが提供されました。
有名な歌手が出演
大手企業の尾牙は大規模で参加者が何千人も超えるので、スタジアムのような広い会場を借りることが一般的です。会場内には大きなステージが設けられ、抽選会やライブパフォーマンスが行われます。

これまでに五月天や八三夭、告五人といった人気バンドが出演したほか、K-POPガールズグループのaespaが登場したこともあります。
従業員がパフォーマンスを披露
尾牙では従業員がダンスやパフォーマンスを披露するのも定番のイベントです。各部署から選ばれたメンバーがチームを組み、2~3ヶ月前から練習を始めます。特に新人が担当することが多いですが、「尾牙は従業員に感謝する場なのに、なぜ従業員が負担を強いられるのか?」という声が高まり、最近では管理職がパフォーマンスを担当するケースも増えています。

でも管理職が全員そろってダンスを練習するのは難しいので、結果的に普段厳しい上司たちが下手なダンスを披露してしまうことが多いです。でもそれもそれで尾牙の楽しみの一つとなっています。
テスの経験談
尾牙は数千人が参加するので、当日の移動も大規模です。仕事を早めに終わらせ、会社の前には何十台ものバスが待機。まるで小学生の遠足のように、普段一緒に働く仲間たちと同じバスに乗る不思議な体験をしました。
そのときの上司はすごく嫌なやつで、せっかくの尾牙だからチームメンバーたちは仲良しですが、誰も上司に声をかけませんでした。一方で、隣の部署のリーダーは優しくて人望が厚く、チーム全員で大盛り上がり。

その差を見て、「ざまあみろ」と思ったのを今でも覚えています。未だにその上司のことが嫌いです。私を傷つけた人を一生許しません(笑)。
中小企業の忘年会
規模の小さな会社の尾牙は、大手ほど派手ではありません。むしろ、日本の忘年会に近い形式です。
例えば、以前勤めていた社員数30人ほどの会社では、個室のあるレストランを予約してただみんなで食事を楽しむだけのシンプルな会でした。従業員によるパフォーマンスはほとんどなくて、抽選会がメインイベントでした。景品は現金や家電などで豪華とは言えませんでしたが、何もないよりは良かったです。
ちなみに、台湾では尾牙の費用はすべて会社が負担します。
こちらの記事では、台湾で働く日本人が現地の尾牙に参加した体験談が紹介されています。まるで自分もその場にいたかのようにリアルに記録されていて、台湾文化を深く知ることができるのでおすすめです。
お酒が苦手でも楽しめる!
台湾では「お酒文化」が日本と韓国ほど強調されてないので、飲むか飲まないか完全に個人の自由です。
もちろん、「飲まないと失礼だ!」と思う人も中にはいますが、台湾ではそこまで強制されることは少ないです。特に私の場合、これまでに4社の尾牙に参加しましたが、一度もお酒を無理に飲まされたことはありませんでした。

<※以下の話、職種は営業だと状況が変わるかもしれません!>
「敬酒」はお酒じゃなくてもOK!
台湾の尾牙では「敬酒」という文化があります。これは、飲み物を持って偉い人に「お疲れさま」「いつもお世話になっています」などの感謝の言葉を伝えながら、一口だけ飲むものです。ただし、その飲み物は必ずしもお酒である必要はありません。ジュースやお茶でも全然問題ありません。
「サービス」不要の自由な雰囲気
台湾の尾牙では、基本的に誰も「誰かにサービスをする」ということはありません。

日本のように「上司のコップが空いてるから飲み物を注ぎに行かなきゃ!」といった空気を読む必要もありません。台湾の食事会はとても自由なので、飲みたい人は自分で飲み物を頼み、自分で注ぎます。新人や女性が上司のお酒を注ぐような習慣もありません。
エンジニアとして働いてきた私の経験から言うと、むしろ上司に積極的に「サービス」をする人は怪しまれることもあります。例えば、上司にお酒を注ぐような行為は一般的ではないので、それをやると「上司に気に入られようとしているのかな?」と思われるかもしれません。
まとめ
台湾の尾牙は、日本と比べてずっと自由でリラックスした雰囲気です。参加費は無料で景品ももらえますし、とても楽しそうなイベンドですが、勤務時間外なので「参加しません」という人もいます。
あと小さいお子さんがいる同僚は「子どもがまだ小さいので参加できません」と言っていたこともありました。結局のところ、尾牙に参加するかどうかは個人の自由です。
私は尾牙が好きです。

今年は尾牙は旧正月後だ!もう尾牙じゃなくて春酒になるんだ~
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