賭博事件の影から抜け出し、プレミア12で栄光を掴んだ台湾プロ野球

プレミア12 文化/豆知識

この前、台湾が世界野球プレミア12で初優勝しました。国民全体が大喜びして、国家野球デーを制定、現行の500台湾元紙幣の図柄を代表メンバーに変更するという提案まで出されました。ただの優勝なのに、そこまで喜ぶの?と思う外国人の方もいるかもしれません。そこで、台湾人である私にとって「野球初優勝」がどれほど意味深く、特別なことなのか、その気持ちをここでお話ししたいと思います。

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プレミア12で初優勝

私はもともと野球にはあまり興味がなかったのですが、台湾チームが1次リーグで韓国とドミニカに勝ったとき、「あれ、今年強いかも…!」と思いました。そして、11月16日の日本との試合を見ていたのですが、残念ながら負けました。

プレミア12優勝
ちょうど日本旅行してたから日本で見た!

「あ~やっぱり負けか~」という感じで、がっかりするというよりは予想通りでした(笑)。

日本に負けたとはいえ、台湾が1次リーグを突破し、東京に進出できたことだけでも十分すごいことだと思いました。台湾は12チームの中でランキング11位ですし、たとえこれから負けても選手たちは十分頑張ったと、そのとき本当にそう思っていました。

ところが、その東京ドームでまさかのアメリカ戦勝利!!!

「あれ~~~~すごいじゃん!!今年の私たち、めちゃくちゃ強いじゃん!!」と思いながら日本との決勝戦を迎えました。

その後の結果は皆さんもう知っていると思いますが、なんと4-0で日本を完封して優勝しました!!!

プレミア12優勝

信じられなくて泣きそうでしたわ~~!その試合ではずっと台湾リードしていたのですが、野球はいつでも逆転される可能性があるスポーツだから、試合終了のその瞬間までずっとドキドキしながら観ていました。

チラシ除外事件

日本人向けに作られたプレミア12のチラシには、11人の選手が登場していましたが、優勝したチームである台湾の選手は一人も含まれていませんでした。

試合が始まる前の階段では、台湾は全12チームの中で11位という低いランキングでした。これほど弱いと見られていたチームがチラシに選ばれないのも、ある意味で当然だったのかもしれません。

プレミア12優勝

もし台湾が優勝していなかったら、台湾選手がチラシに含まれていないことを気にする人は少なかったかもしれません。しかし、優勝したからこそこの事件がネット上で話題になり、多くの人が盛り上がりました。

ちなみにこの記事によると、チラシに登場した11人の選手は、各国を代表して選ばれたわけではなく、単純に有名で強い選手たちが選ばれていたようです。だからもともと注目されていなかった台湾の選手が含まれていないのも不思議ではないですね。

優勝お祝い

優勝の瞬間、台湾の選手たちが泣きました。

優勝常連の日本にとって泣くことではないかもしれませんが、台湾にとって国際大会での初優勝は本当に特別で感動的な出来事でした。

プレミア12優勝

お祝いムードは全国に広がって、大手企業が臨時休暇にしたり、多くの飲食店が優勝記念セールを開催したりしました。さらに台北では英雄大パレードも行われて、選手たちが乗った飛行機を空軍のF16戦闘機がエスコートされるという感動的な演出までありました。

台湾は政治的に複雑な理由から、国際大会で「台湾」という名前を使うことができない(チャイニーズタイペイ)、国旗も掲げないです。しかし、国際大会で優勝すると世界に「台湾」を見せることができます。それは優勝よりもずっと嬉しいことだと思います

プレミア12優勝

この試合で3ランホームラン打ったキャプテンの陳傑憲は、ホームを回る時にベンチへ向かって胸元を手で囲む動作をしました。

「TAIWANを書けないが、我々は台湾だ」ということを示しています!

プレミア12優勝

ものすごく感動しましたT.T

次の日、出社すると当然のようにみんなが野球の話をしたり、街のあちこちに優勝セールのお知らせが貼られていたりしました。全国でお祝いしている雰囲気でした。

日本統治時代に野球が伝わる

当時、台湾に駐在していた日本人の方が空き時間に野球をしていたところ、台湾人がそれを見て真似をしながら野球を覚えていったそうです。その後、台湾各地で野球チームが続々と誕生していきました。だから台湾野球は日本野球から始まったと言えます。歴史についてもっと知りたい方にはこちらの動画をおすすめします。

そういうことで日本野球は台湾野球にとって父親のような、師匠のような存在とも言えるでしょう。

台湾で「国球」と言えば間違いなく野球です。サッカーよりも、バスケットボールよりもずっと人気です。500元紙幣に描かれた絵柄も野球ですし、台湾人は野球が好きでとても重視しています。

プレミア12優勝

今回の優勝は、国際大会で「師匠」に勝って立派な「弟子」になれたという気持ちは、多くの台湾人の中で少なからずあるのではないでしょうか。

野球賭博事件で観客がいなくなった

しかし、台湾プロ野球には「闇の時期」がありました。それが中国語で「假球事件」と呼ばれるプロ野球賭博事件です。

当時、プロ野球に関わる違法賭博が多発し、選手たちはヤクザに脅されることがありました。脅迫を受けた選手は、お金を渡されてヤクザの指示通りにわざとミスしたり、試合に負けたりすることがあったのです。

台湾プロ野球は1990年から始め、その後20年間で深刻な賭博事件が5回も発覚しました。

プレミア12優勝

選手の給料が高くなかったので、大金を渡されたらつい協力してしまう選手もいたのは事実です。もちろん悪いことをしたんですが、選手たちも辛かったでしょうね。当時の資料を調べたら、ヤクザは「協力しないなら、君や君の家族がどうなるかわからないぞ」と言って、従うまで暴言や暴力を繰り返したそうです。それでトラウマになった選手も少なくないようです。

こちらは1990年から台湾プロ野球の平均毎試合観客数推移です。

プレミア12優勝

普通であれば、社会が安定し豊かになるにつれてスポーツ観戦の人気が高まる一方のはずですが、1996頃は賭博事件で観客数が6000人から2000人未満まで減りました。その後少し回復してきたら、次の賭博事件が発覚し、また人気が落ちるという繰り返しでした。

私はもともと野球には関心がなかったので、賭博事件に直接の影響は受けませんでしたが、周りの人々の熱度は時期によって大きく変わっていたのを覚えています。学校では、プロ野球の話題で盛り上がる時期もあれば、全く話題にならない時期もありました。

「どうせ全部フェイクだし、応援する意味がない」という声が多かったです。

選手が試合中にミスすると「またわざとやったんじゃないか」と疑う人が多く、選手たちへの信頼感が完全に失われていた時期もありました。

2013のWBC

2013年には観客数がまた6000人に戻りました!それはなぜかというと、2013年の野球国際大会WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の影響です。

この大会では、MLBで活躍していたエースピッチャーの王建民と日本プロ野球で活躍していた陽岱鋼も出場しました。台湾代表は第1ラウンドを見事1位で通過し、東京ドームで行われた第2ラウンドに進出しました。しかし、その第2ラウンドで日本との試合に3-4で負けいました。

あの試合は台湾がリードしていたけど、延長戦で最後は逆転されました。本当に惜しかった試合でした。

プレミア12優勝

さらに2013年、MLBのスター選手であるマニー・ラミレスが台湾プロ野球に参加し、中国語では「曼尼」と訳されました。マニーを観るために再び球場に足を運ぶ観客が増え、プロ野球が再び活気を取り戻しました。

話がそれますが、2013年のWBCの時、当時付き合っていた彼氏に「一緒に試合見てほしい」って言われて、私はなぜかどうしても観たくなくて断ったら…「全国が観てるんだよ!なんで君は一緒に観ない?!」と怒られて、ケンカにもなったことを覚えています(笑)。今思えば、あの時一緒に観ておけばよかったな~って!

まとめ

台湾野球は日本の影響で誕生し、その後プロ野球には暗い時期もありましたが、ついに今、栄光を掴み国際大会で初優勝を果たしました。

この初優勝に対する思いは人それぞれかもしれませんが、選手たちへの感謝の気持ちが一番大きいと思います。選手たちが頑張ってくれたおかげで、世界に台湾を見せることができました。本当にありがとうございました。

とても楽しい試合を観ることができました。選手の皆さん、お疲れさまでした!

テス
テス

普段野球観ないけど、プレミア12楽しかった!

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